ネコの手☆日記 2012年9月

2012年9月30日(日)
金木犀香る日に
しばらく日記の更新が止まってしまってました。
仕事が忙しいというのもありましたが、他にも理由がありました。
9月の日記は、これひとつだけです。
私にとって辛い内容であり、読んでいただくかたには
楽しい内容ではないので、読みたくないかたは、10月の日記へと
飛ばしてお読みいただくことをおすすめします。










8月、譲渡会から譲り受けた「そら」と「ふう」の子猫ですが
10月3日の朝、そらが天に召されました。
生まれて4ヶ月の短い命でした。
【FIP】でした。


我が家へ来たのが8月5日。
すぐに動物病院へ行って二匹とも検査して
白血病もエイズもジアルジアも陰性で、安心していました。


どうも具合が悪そうだな?どこか変だな?と
1週間くらいした頃から感じてはいました。
最初は熱が出て下痢してたのですが、病院で何度も見てもらい
血液検査しても、わかりませんでした。


そうして過ぎていくうちに、ふうはどんどんジャンプしたり走り回ったりするのに
そらはテーブルの上までのジャンプもできる頃なのにイスの上がやっとで
走り回ることもしません。熱も高いままだし、やはりどこかおかしいと思い
再度詳しい血液検査をしてもらった結果
【FIP】(猫伝染性腹膜炎)だとわかりました。
抗体の数値が異常に高く、すでに発症していました。


【FIP】は「コロナウィルス」というウィルスが原因で起こる病気です。
「コロナウィルス」自体は、とても一般的なウィルスで
多くの猫、人間も、普通に持ってます。
それが何らかの原因で突然変異を起こしたのが【FIP】です。
「コロナウィルス」が【FIP】に変異する原因もまだはっきりわかっていません。


【FIP】は、発症したら、ほぼ助からないと言われています。
今現在、予防のワクチンなどの手段も無く、効果のある薬もほとんどありません。
助ける手立てのない、猫にとっても飼い主にとっても最悪とも言える病気なのです。


普通の「コロナウィルス」は伝染性で、糞尿や唾液などから感染するので
同居する猫はほぼ必ず感染してしまうと言えますが
生まれた時から完全室内飼いで、他の猫と接触したこと無い猫でもない限り、感染してる子は多いです。
もみじは、外へ出入りしてたミミと同居してたので、たぶんもうとっくに感染してると思います。
ただ、「コロナウィルス」だけでは、たいした症状もなく、抗体を持つだけで発症しないことがほとんどです。
【FIP】に変異してしまったときだけが、重篤なことになってしまいます。
猫から人間に伝染することはなく、最近では【FIP】の猫から他の猫へ【FIP】が伝染する可能性は
とても低く、あまりないだろうと言われています。
もちろん、できれば隔離したほうがよいでしょうが、そこまでしても
ある意味、発症するときは発症してしまうので、ムダと言えなくもないです。
もっと詳しいことをお知りになりたいかたは、ネットで検索してみてください。


猫に【FIP】という病気があることは知っていましたが
まさか自分の引き取った子猫が発症するとは夢にも思っていませんでした。
病院でそらに疑いがあると言われ、検査結果が確定したときは目の前が真っ暗になりました。


ここでお断りしておかなくてはならないのは
普通、譲渡会などで譲渡される猫たちは、良心的な会でも
エイズ、白血病、ジアルジア、の検査くらいで、【FIP】の検査まではまずしません。
子猫の場合、検査の反応がわかりにくいということもあり
なにより発症する猫の数が少ないと言われてる病気なので、しないところがほとんどです。
なので、譲渡会で子猫たちを譲渡していたかたたちに責任はありません。
誰のせいでもないのです。
発症してしまった・・・
それはもう、そらの運命だったとでも言うしかありません。


【FIP】発症がわかったとき、そらはまだ生後3ヶ月でした。
悲しく、悔しいことに、この病気は子猫に多いのです。
6ヶ月〜2歳くらいの猫に多いとも聞きます。
今現在、元気な成猫も、突然発症してしまうことだってあるのです。


それから、対処療法の投薬が始まりました。
毎週のインターフェロン注射(最初は週に3回でした)
毎日の抗生剤投薬、ステロイド投薬、インターフェロン入り目薬、サプリ・・・
できることはすべてやったかもしれません。
我が家へ来てすぐ、具合悪そうで何度も検査のため通院してたので
我が家で過ごした2ヶ月ほとんど、通院生活だったようなそらでした。


【FIP】の症状には「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」があります。
多くは「ウェットタイプ」といい、胸やお腹に体液が溜まって膨らみ呼吸が苦しくなり
腎臓肝臓など、内臓にも影響を及ぼします。
「ドライタイプ」は腹水などは溜まらないのですが、神経系をやられ
運動マヒ、痙攣、目に特有の斑点のような症状が出ます。


そらは「ドライタイプ」でした。


最初、左目に薄茶色の斑点が出てきて広がり始め、必死に「インターフェロン入り目薬」を1日何度もさしました。
なかなか改善せず、そのうち突然、右目の中が血で真っ赤になりました。
ドクターによると、血のほうは、【FIP】とは違うかもしれないとのことでしたが
真っ赤になって見えなくなった右目が痛々しく、なぜこんなことに・・・と、胸が張り裂けそうになりました。
そらの体力も、少しずつ低下しているように見えます。


折しも、締切が迫ってくる仕事のさなか。
それでも時間をやりくりして、通院しました。
アシさんたちが寝た後、ひとりで泣きながら原稿を描きました。


いつ、悪化して最悪な状況になってしまうんだろうと、毎日毎日、不安に押しつぶされそうになりながら
周囲のみんなの力に助けられて、原稿は無事に完成しました。


これで、そらをつきっきりで看ていられる、少しでも長い時間付き添っていられると思いました。
通院が続き、薬の調整をしながら毎日投薬します。
一時、膀胱炎を起こし、オシッコの量が減って何回もトイレに入るようになったのですが
薬が効いたのか?少しずつ少しずつ改善の兆しが見えました。
状態は上がったり下がったり。
そらを抱いてるときは笑顔で撫でながら「病気なんか飛んでけ〜!消えちゃえ〜!」と
毎日、呪文のように繰り返しました。
するとまるで呪文が効いたかのように、右目の血が吸収されて小さくなっていき
左目の斑点も徐々に消えて、ほとんどなくなってきたのです。
食欲も出てきて、ふうと一緒に催促してくるほどになりました。
明らかに安定しはじめたそらを見て、ドクターも
これはもしかして奇跡もあるかも?と言ってくださってた矢先でした。


そらの食欲がガクンと落ち、何も食べなくなってしまいました。
いままで投薬も目薬もサプリも、ほとんどいやがらず、がんばってきたそらが
強制給餌だけは必死にいやがります。
便の中に血が混じるようになり、だんだんひどくなっていきます。
ぜんぜん食べないので、みるみる痩せ細っていきます。
何か食べさせなくては体力がなくなると、フードを液状につぶしたものをシリンジで飲ませると
ほとんど血の塊のような便をしてしまうようになり
そらがいやがることは、もうしまい・・・と、強制給餌はやめました。


あとはただただ、見守ることしかできませんでした。
どんどん弱って、足にマヒが現れ、歩くのもやっとでも
ふらふらしながら自力で必死にトイレへ行こうとするそら。
その力もなくなっていくのがわかります。
目を離すのが怖く、寝て起きると、そらが息をしてないのではないかと、毎日不安でした。
どうしてこんな残酷な病気があるんだろう、
とても優しくて人間も猫も大好きな性格で可愛い声で鳴くそら、
まだ生まれて数ヶ月のそらが、どうして死ななくてはならないんだろう、
理不尽で悲しくて辛すぎる思いに、そらの見ていない場所で毎日、泣いて過ごしました。
猫には人間の気持ちがわかってしまいます。
こんな小さな子猫でも、私が泣いていると心配するように見つめて鳴いてくるのです。
そらの前では決して泣かないでいようと決めてました。


動物には、自分がなぜこんな状態になってしまったのかなんてわかりません。
どうして体が思うように動かないのか、病気のことや理由なんてわかりません。
ただただ、痛くて苦しくて辛いのだと思います。
それを受け入れて、生を貫こうとしてるのかもしれません。
もしかしたら、自分の残された時間も本能でわかっているのかもしれません。
ほとんど動けなくなってしまったそらの瞳は、いつもとても静かでした。


10月3日の朝、私が側に行くと、まるで待ってくれていたかのように、そらが鳴いて私を呼びました。
「どうしたの?ここにいるよ。大好きだよ」と、抱いて、そっと撫でて、ずっと声をかけ続けました。
しばらく安心したようにそうしていた後、
一声鳴いて、パタパタと空を蹴るように手足を動かしたと思うと
そらの上下していた胸の動きが止まり、心臓の鼓動が止まりました。
そらは私の腕の中で、息を引き取りました。


窓から金木犀の香りが運ばれてくる朝でした。


もう、そらを苦しめるものは何もありません。
何もかもから解放されて
いまごろそらは自由に駆け回り、ジャンプしてるかもしれません。
そらが風を切って走る姿はきっとカッコよかったろうな。
一目でいい、見てみたかったよそら。


我が家に来て、ほとんど闘病生活で毎日薬を飲んだり注射して
イヤな思いばかりさせてしまったのではないだろうか?
果たしてそらは幸せだったのだろうか?と
いまも胸の中に思いが残ります。


「そら、大好きだよ。ありがとうね」とよく晴れた青空を見上げ
名前のとおり、空に還ってしまったそらに声をかけています。
そらの返事が聞こえるような気がして。




【そらの想い出アルバム】



我が家へ来たばかりの頃のそら   イケニャンでしょ




暑い8月、ふうと仲良くフローリングに寝転ぶそら
  
                                             仕事場のイスが大好きでした



ビニール袋が大好きだったね                   シャカシャカトンネルも大好きだった
  




クリスマスハウスもお気に入り





ふうとよくとっくみあいでじゃれてたっけ





こんな美しい猫、めったにいないよね             とびきりのイケニャンだったよ、そら
  




タワーは1段目までしか登れなかったけど、ふうのしっぽ攻撃が楽しかったね
  




ふうと一緒                                     あったかくてしあわせ
  




暴れん坊のふうだけど、こんな場面も                          
  




ひなたぼっこも大好きだった
  




何を見てたのかな






10月3日  そら 永眠




お気に入りだったザブトンをダンボールに敷いて、そらを寝かせました
眠ってるようなそらを見てふしぎそうなふう





笑ってるみたいに見えるそら   もう苦しくないね

ゆっくり眠ってね      おやすみ、そら      いつかまた会おうね




10月4日   市内のお寺でそらを荼毘に付しました





お世話になっていた動物病院からお花をいただきました  本当にありがとうございます



=====追記=====

最後に
この病気は発症してしまうと致死率がとても高いのですが
本当に少ないとはいえ、助かった症例もあるようなので、100%助からないというわけではないと思います。
なにより、全国の、同じ病気で闘っている猫ちゃんと飼い主さんにとって
もしもこの日記を見てくださった際に絶望を与えてしまうことになりませんように・・・
気休めかもしれませんが、1%でも、0.1%でも、助かる子がいる限り
絶対に死んでしまう病気だとは思いたくありません。
同じ病気でも、猫それぞれで症状もみんな違いますし、治癒力も違います。
どうか1匹でも多くの猫たちが助かりますように。
そして有効な薬が一日も早く開発されますように。
家族を失う悲しみができるだけ減っていきますよう、心から祈ります。